会長が語る家づくりの原点
キーワードは「太陽」お客様に喜ばれる住まいを目指して。
お客様に喜ばれる住まいを開拓すること。私の家づくりは「太陽」がキーワード。
これから求められるクリーンエネルギーの普及や環境問題を考えると、取り組んできたことすべてに通じるテーマであり、今後も求められるものです・・・
取締役会長 菅原三郎
「あたたかい家づくり」をはじめたきっかけ
そうですね、私が職人として働きはじめた昭和40年頃は建て替えの時に、よく古い茅葺の屋根を何件も解体したものです。実際に作業しているととても「カビ」臭く、特に納戸や裏廊下はひどいものでした。お施主様にはお見せできるようなものではありません。住まいに限らず日本にはやはり四季とともに梅雨があり、湿気・湿度はさけられません。しかし、そんな光景を見るたびに、そのころの私は、睡眠時間も考えれば人生の大半を過ごしている住まいがもとで健康を害し、病気にもつながっているという現実をなんとかできないかという思いが強くなり、いつもそれは頭の中にありました。
独立してから数年、そんな私に大きな運命的な出会いが訪れました、それが「エアサイクルの家」です。通気層を持ったその新しい工法は、これまでは閉じ込められていた壁の中や小屋裏の空気を動かすことができる画期的なものでした。まだまだ工法や性能といった言葉すら耳慣れない時代でしたが、カビや湿気に強く長持ちする快適な住まいならばお客様に絶対喜んでいただけると思い、何の迷いもなくすぐさま取り組む事にしたのです。簡単にまとめるとエアサイクルの家には大きなメリットが3つありました。
「通気層があること」
これは湿気またはカビを解消し、さらに住まいの大切な柱を長持ちさせることができます。先程もお話しましたがこれは壁の中と小屋裏、そして基礎が一連の通気層を持たせることで普通ならこもってしまう熱や湿度も自然と解消出来るようになります。リフォームの現場で未だによく目にしますが、施工された断熱材(グラスウール)が黒くカビているのは、長年の間に湿気を吸収することがその一因です。そして特に夏場の太陽の熱でこもった壁の中の空気が原因で夜涼しくなっても室内が蒸し暑いままですが、通気層があることでこの熱がこもることなく、小屋裏から排出することができるので快適になります。当時のプレハブメーカーはジュータン敷きで建材がほとんど。それがダニやカビにもつながってもいたのです。
「自然のエネルギーをつかうこと」
先程からお話している「通気層」を空気が動く「エアサイクルの家」。その流れは換気扇などの機械がするのではなく、太陽と風を上手に活用することで賄っています。例えば暖められた空気は上昇します。その空気は屋根までいくとより涼しい北側へと下降し、さらに床下を循環します。自然に逆らうことなく、その原理を巧みに利用した住まいはまさに私にとって理想でした。今でこそ注目されるエコロジーな家づくりですが、エアサイクルの家は25年以上も前から一貫してきたそのパイオニアであると言えます。
「あたたかい住まいになること」
その空気層は冬は閉じこめることで断熱層となり、床下、壁の中ともにあたたかいもうひとつの理想も実現できます。カラッとした室内とあたたかい家はこの後、菅原工務店の大きな売りとなりました。
簡単にあたたかい家づくりへの取り組みをお話してきましたが、実はこの「エアサイクルの家」見た目は普通の家と同じでもかなり割高。見えない部分に専用のパネル(断熱材)を施工し通気性を高めた特殊な基礎も必要。ということで初めの一棟を手掛けるまで、なんと3年かかりました。
空気がまわる? 湿気が少ない? 冬あったかい?? 実績のない私と生まれたばかりの省エネ・健康住宅。当時は景気も良く、あえて面倒な説明なしでも普通の家が次々建てられた時代です。でも、今までと同じ家はしたくない。長持ちする快適な「いい家」をつくって喜ばれたい! 次第にそんな熱意に共感しお話を聞いていただけるお客さまも増え、2棟目、3棟目と少しずつ増えていきました。実際にお客様からも予想以上に褒められて「これしかない!」とあらためて確信したのを覚えています。
お客様のところに行くと「電気毛布がいらなくなった」とか「風邪を引きにくくなった」というお声をこれまで本当にたくさん頂きました。それが何よりうれしかった。そして末永くお付き合いをさせていただける。初めは本当に大変でしたが、その苦労も吹き飛ぶ瞬間です。冬暖かくて夏涼しい家は、言い換えれば省エネの住まいであることも証明してきました。エアコンを使う日が普通の家より少ない、暖房も家全体が温まるので灯油が今までより少なくて済む、それは長い目で見ると光熱費も大幅に節約でき、家のランニングコストの削減にも効果がありました。
その後、大崎で一番の実績と記念すべき施工実績100棟も達成。宮城県北部の会長にも就任することとなり、すっかり「エアサイクルの家」は菅原工務店の代名詞となりました。
オール電化住宅との出会い
今から13年前ともなると、オール電化住宅もまたまだまだ始まったばかり、大手メーカーはもちろん地元ならず全国でも先駆けた取り組みでしたが、「エアサイクルの家」で省エネ、快適な住まいづくりをしてきたことで私自身すんなり取り組むことができました。立ち上げの苦労はすでに免疫ができてましたから(笑)。
東北電力さんの支援の下、「正建会」というオール電化を推進していく地元工務店の会を5社で立ち上げ、その中でお互いが切磋琢磨し私も大崎エリアを中心に普及を進めてきました。この場で私も多くを学び、家づくりに反映してきました。時代が地球温暖化、環境問題を背景に省エネへと加速し始めた時に、これからの住まいの形として登場してきたのが、オール電化住宅です。大手ハウスメーカーでの本格的な取り組みもここ5年前後ではないでしょうか。いいものであればいち早く取り組み、お客様にご提案していく。地場の工務店でも負けてはいないということを証明できたことも後に大きな自信となりました。
それとほぼ同じ時期に、太陽光発電システムを私は自宅に導入しています。もともとは新しい事務所への設置を考えていましたが、断念し自宅へ取り付けることになったのです。
今思えば、自宅では新築時からすでに太陽熱温水器を使っていました。そしてエアサイクルの家も「太陽と風を利用した健康住宅」というキャッチフレーズからも分かりますが、、自然のエネルギーを活用しています。太陽のエネルギーなら元手もタダじゃないですか(笑)、それがすごくいいし、さらに価値に変わることに単純にすごいと感じ大きくひかれました。今でも電気は買うのが当たり前ですが、それが自家発電でまかなうことができて、さらに余った電気を電力会社に売ることができる。この意識の違いは本当に大きなもので、当時の私には画期的なものでした。古川ではほとんど最初の事例です。取付も苦労しながら仲間の業者さんと工事したのも今思えばいい思い出です。
そして、この時点でいつかこの太陽光発電システムを事業としてやってみたいという「夢」が私にはありました。地元の工務店が取り組める環境事業としては最高の仕事だと・・・。
まだまだ高価なものでもあったので、実際に自分で試して納得してからではないと地域の皆様におすすめしたくはありませんでした。結果、導入から5年後に事業として開始し、現在、(株)住まい工房アイムとして県内2ヵ所で京セラソーラーFC店を展開するに至っています。そのルーツが14年前に設置したこの自宅のパネルです。
私の家づくりは「太陽」がキーワード。これから求められるクリーンエネルギーの普及や環境問題を考えると、取り組んできたことすべてに通じるテーマであり、今後も求められるものです。これまでの取り組みを通じて、地域の住まいづくりの進歩や発展にささやかながら貢献できていれば私にとってこのうえない喜びです。
そんな中、未曽有の大災害が私たちに訪れました。2011年3月11日、東日本大震災です。建物の倒壊や停電・断水などのライフラインが止まり、沿岸部の津波被害は特に甚大なものがありました。日に日に広がる被害の中、私たちも被害の復旧とお客様のエコキュートの修理対応にしばらく明け暮れました。足を運んだ先々で太陽光発電を使い、テレビから情報を得たり、携帯電話の充電から炊飯器、中には洗濯機まで動かして暮らしをつなげたという感謝の声がたくさん寄せられて、非常用電源の必要性を痛感することになりました。まさか、一度にすべてのお客様がこの自家発電機能を使う日が来るとは夢にも思いませんでしたが・・・。
食はもちろんですが、エネルギーの安定供給が、安心して暮らす為の礎だと気づかされた私たちは、太陽光発電事業における宮城のパイオニアとして、地域社会のエネルギーの進歩と多様化に貢献すべく、メガソーラー事業に挑戦することを決意します。それが「第1・第2おおさきメガソーラー」です、地域の皆様との出会いとご協力の中で形にすることが出来たことは今でも感謝に堪えません。
その竣工祝賀会の席で、大崎タイムス社の伊藤社長さまにお声がけいただき、紙面での連載が決まったのが「さぶちゃん奮戦記-菅原工務店創業物語」になります。私自身を振り返る大変貴重な機会を頂きましたし、10か月もの長期連載の末、会社の45周年に節目に書籍化されたことへの感謝と喜びは生涯忘れることができません。
そして、裸一貫で親戚もない私が「開拓の心」で大工の仕事、さらには家づくりの仕事を通じてお世話になった皆様とのご縁で、今では大きな家族のようなつながりがこの土地にも出来たのだとあらためて感じたのが昨年の50周年感謝祭の時でした。
誠に感謝に堪えませんし、菅原工務店を育んでくれた地域への恩返しの気持ちを忘れず、これからも末永く喜んで頂ける家づくりに邁進してもらいたいと思います。