川渡温泉のおはなし
投稿日:2023.08.10
鳴子温泉でガイドとして暮らしている、齋藤理です。このコラムでは、私が暮らしの中で感じる「鳴子温泉」のおもしろさを、皆さんにお伝えしていきます。
第一回でご紹介した鳴子温泉郷。エリアには川渡、東鳴子、鳴子、中山平、鬼首の5つの温泉地があり、「単純温泉」「塩化物泉」「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「含鉄泉」「酸性泉」「硫黄泉」の7つの泉質が楽しめます。
今回は川渡温泉のご紹介。鳴子温泉郷の東端に位置し、荒雄川(江合川)の南側の山ふところに温泉街が広がります。お湯との関わりの歴史は古く、837年に火山活動と共に温泉が湧いた記録があります。
川渡温泉街の旅館・共同湯では、硫黄の香りがする「緑色」のお湯が楽しめます。その泉質は「炭酸水素塩泉」「硫酸塩泉」「硫黄泉」と「単純温泉」の4種類。実際には、「含硫黄-ナトリウム-炭酸水素泉」「単純硫黄泉」の様に、混ざり合った温泉を楽しむことができます。
ここで言う「炭酸水素ナトリウム」は「重曹」のこと。重曹は水に溶けると弱アルカリ性を示します。油分を取り除いてくれたりと、水回りのお掃除でも大活躍しますね。入浴時には、肌の表面で石鹸の様な役割をして、お肌の余分な皮脂や角質を取り除き、なめらかにしてくれます。また、「硫黄」はお肌のくすみの大敵メラニンに対しての作用が。これは次回またお話しします。
お湯の「緑色」にも秘密があります。湯口の新鮮なお湯を白い桶に汲んでみると、透き通った黄色をしています。これは、お湯に溶けている硫黄の成分の影響です。このお湯が空気に触れることで、溶けているカルシウムなどの粒がだんだんと大きくなり、青い光だけを反射する様になります。ちなみに、この反射を「レイリー散乱」と呼びます。お湯自体の黄色と、反射される青色が混ざり、私たちの目には「緑色」に見えるんですね。
温かくて、色や香りも楽しい温泉。地学や、物理や化学の視点を加えると、その背景がちょっとずつ見えてきますよ。
お話しする人
齋藤 理
ガイド/SomeSpice合同会社 代表社員/鳴子温泉もりたびの会 理事
ガイドとしてTV、ラジオ、雑誌などで鳴子の魅力を発信。地域の地形や文化を深掘りするツアーを行う。
<保有資格など>
温泉ソムリエマスター/LNTトレーナー(アウトドアで環境に配慮するためのテクニック)/WFR(野外救急法資格)/GSTC Professional Certificate in Sustainable Tourism(持続可能な観光)