菅原工務店

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東鳴子温泉のおはなし

投稿日:2024.06.13

鳴子温泉でガイドとして暮らしている、齋藤理です。このコラムでは、私が暮らしの中で感じる「鳴子温泉」のおもしろさを、皆さんにお伝えしていきます。

   

鳴子温泉郷には川渡、東鳴子、鳴子、中山平、鬼首の5つの温泉地があり、「単純温泉」、「塩化物泉」、「炭酸水素塩泉」、「硫酸塩泉」、「含鉄泉」、「酸性泉」、「硫黄泉」の7つの泉質が楽しめます。

   

今回は、川渡温泉の西隣、東鳴子温泉をご紹介します。東鳴子温泉では「炭酸水素塩泉」のほか、「塩化物泉」「硫酸塩泉」、「硫黄泉」と「単純温泉」が楽しめます。

   

東鳴子温泉のお湯の特徴はなんといっても黒い色と、ツルツルの浴感。このツルツルの浴感の正体は「炭酸水素ナトリウム」。水に溶けると弱アルカリを示して、せっけんの様にお肌の余分な皮脂や角質を落としてくれます。かけ湯を丁寧にするだけでも、せっけんを使ったあとの様にさっぱりしますよ。

   

東鳴子温泉の「ナトリウム―炭酸水素塩・硫酸塩泉」

この黒いお湯の正体は植物性の物質「フミン酸」。フミン酸は、腐植ふしょくと呼ばれる、植物が長い年月をかけて変化したものに由来します。では、その植物は一体どこからきたのでしょうか。

   

実は、東鳴子の裏山はいまも活動を続ける活火山。何万年も昔には噴火を繰り返していました。噴火をして、森が再生して、また噴火をして……。鳴子の地面の下には、太古の森が火山灰などでサンドイッチされた状態になっています。

   

その太古の森の地層を、活火山のマグマで温められた熱水が通ることで、木々が変化してできたフミン酸を含んだ黒いお湯が湧くのです。

   

東鳴子の温泉は、浴槽や浴室は石でできているのに、優しい木の香りがする所が多くあります。そんな優しい香りのお湯に身をしずめて、太古の森に思いを馳せてみては。

   
 

【参考】
土谷, 伊藤, 関, 巖谷(1997). “岩ケ崎地域の地質: 地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)”. 地質調査所: 70-71

4月に開催しためぐり市で開催したセミナー「東鳴子の温泉はどんなお湯?」の動画も公開中です。ぜひご覧ください。

温泉ソムリエが教える!鳴子の温泉の魅力 東鳴子の温泉はどんなお湯?

お話しする人

齋藤 理

ガイド/SomeSpice合同会社 代表/鳴子温泉もりたびの会 理事/鳴子まちづくり会社 取締役/日本エコツーリズムセンター 理事
ガイドとしてTV、ラジオ、雑誌などで鳴子の魅力を発信。地域の地形や文化を深掘りするツアーを行う。

 

<保有資格など>
温泉ソムリエマスター/WEA COL(野外指導者)/LNT L2インストラクター(環境倫理)/WMTC WFR(野外救急法)/GSTCProfessional Certificate in Sustainable Tourism(持続可能な観光)

 

このコラムは、弊社発行の「工務店ミュージアム 学びのコラム(2024年6月号)」に掲載したものです。